『パーソナルな部分に染みる音色』
まるで笛の音のような歌声の柴田淳。内側で鳴らされる倍音に切なさを乗せ空に放ってゆく音色は、透明さと共に華奢で繊細ですが、凛とした意思も細部に宿しており、それはまるで日本人女性の美しさをそのまま声に表すようです。また空気を切るような音はどことなく彼女の詞の世界に登場するヒロインの小さな胸の叫びにも重なります。他方、実声が伸びきった先で裏声になったときのレースのような繊細さも重要な表現方法になっています。
今作はシングル曲集なので、メロディの綺麗さにそれら声の特徴が乗ってゆく彼女の音楽の効用がよくつかめます。「隣の部屋」等、特に切なさに特化した曲調の際に柴田淳というアーティストの本領が発揮されますね。マイナーコードにおける彼女の声は、暗闇を光に向ってしなやかにまっすぐ伸びてゆく草木のように無垢さが光ります。
またピアノの音色との相性は抜群で声のピュアさが重なるからか、どの曲でも必ずピアノの旋律が重要な役割を果たします。特に「ため息」「未成年」等イントロがピアノ前奏で彼女の最初の声が入る瞬間というのは、柴田淳の聴き所の一つでしょう。音のおき方がピアノの鍵盤を押さえる静けさと同じアプローチなのです。その時の声の鳴らし方は内省的な深みをもっています。彼女はその響きをずっとキープさせたまま、非常にしなやかな流線型でメロディを紡ぎます。その時の儚く切ない美しさが、当に魅力です。
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